【実践】自律神経を整えるには呼吸とストレッチから

何だか最近疲れが取れない、季節の変わり目に体調を崩す、そんな経験はありませんか?もしかすると“自律神経”が乱れているかもしれません。今回はアンバランスになりがちな自律神経について詳しく見ていきましょう。

 

自律神経は私達が意識していないところで全身を整えてくれます。つまり心臓や内臓など自分の意志ではコントロールできない、生命維持機能を調整する役割を担っているのです。

 

第1章【意外と知らない自律神経の役割】

自律神経は心臓を中心とした血液循環、消化吸収などの内臓機能、ホルモンバランスの調整、そして体温や呼吸を調整しています。

 

手や足を動かすことは自分の意志で行うことができますが、心臓をギュッと引き締めたり内臓をグルっと動かそうとしても動かせないですよね?それでも心臓は鼓動を繰り返し、内臓は休まずに働いています。このように、私達が意識しないところで身体は常に自律神経によってコントロールされているのです。

 

そして自律神経は交感神経副交感神経から構成されています。正反対の役割を果たすこれらの神経は、身体のアクセルとブレーキの関係にあるのです。

 

Ⅰ.身体を起こす交感神経(アクセル)

日中の活動によって活発となる交感神経は、緊張している時ストレスに晒されている時に活躍します。交感神経の作用により心臓の拍動は早くなり、血管は収縮して血圧を高まります。そして体温は上がり、筋肉は力を発揮しやすくなるのです。

 

つまりハキハキと身体を動かすためには交感神経の働きは不可欠であり、トレーニング中に力を発揮するためにも交感神経が働いています。

そしてこの交感神経が優位に働くことによって基礎代謝は向上し、消費エネルギーが増加することもわかっており、ダイエットやボディメイクにチャレンジする方にとって大切な機能の1つであることがわかりますね。

 

Ⅱ.身体をリラックスさせる副交感神経(ブレーキ)

身体のエネルギーを消費する交感神経にブレーキをかける働きを持つのが副交感神経です。副交感神経は主にリラックスした状態を維持するために働く神経であり、音楽を聴いてリラックスしている時やお風呂に入っている時、そして食事を摂っている時に内臓の消化活動を活性化させ、栄養の吸収や排泄をコントロールする役割を担っています。

そして睡眠にはこの副交感神経が優位に働き、血圧は低下して休息モードへと切り替わるのです。

 

このように、あなたの1日のリズムは自律神経によってコントロールされているのです。

 

第2章【増えてない?カラダの不調】

心と身体のリズムを整える自律神経が乱れるとどのような影響が現れるのでしょうか?

もしかすると、“自律神経失調症”という言葉を聞いたことがあるかもしれませんね。この言葉の通り、自律神経が失調することによって身体のリズムは乱れ、不安感や倦怠感を伴います。そして頭痛や肩こり、動悸や息切れ、不眠、めまいなどの不定愁訴が見られるのです。

当然人によって症状の個人差はありますが、病的とはいかないまでもこれらの症状を感じたことはある方は少なくありません。

その他自律神経が乱れる状態が長く続くことで、様々な問題が内臓器や全身に現れてしまいます。例えば便秘や下痢、腹痛が頻繁に起きたり、身体はのぼせるほど暑く感じるのに手足は冷たい、これらの症状は全身の血管の収縮をコントロールする自律神経が乱れることで起こる不調の1つなのです。

 

そして最近、イライラしていないですか?

些細なことでカッとなってしまい、仕事や家庭、プライベートでトラブル続き・・・なんてことも珍しくありません。心を落ち着かせるためにも自律神経は大切な役割を担っているのです。

 

第3章【自律神経はなぜ乱れるのか?】

それでは次に、なぜ自律神経が乱れてしまうのか調べていきましょう。

 

自律神経には2種類あるとお話しましたが、問題となるのは交感神経(アクセル)と副交感神経(ブレーキ)の切り替えが上手くいかないことにあります。

人間には生活のリズムがあり、このリズムを乱す原因が不規則な生活習慣や過度のストレスにあるのです。

 

Ⅰ.睡眠不足

社会的に問題となっているスマホ依存の影響は、やはり見過ごすことが出来ません。本来副交感神経が優位となるはずの睡眠ですが、スマホなどの電子機器によって強い光刺激が加わることにより瞳孔は収縮し、脳は覚醒状態となります。これでは睡眠の準備を身体は行うことができず、必然的に睡眠時間が削られてしまいます。

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Ⅱ.不規則な食事

睡眠不足によって次に影響を受けるのは食事です。朝ギリギリまで寝てしまうことによって朝食を摂る時間が削られることは、栄養の面だけでなく自律神経にとっても大きなダメージとなりかねません。朝食を抜くことで、前日の夕食から長時間胃は空の状態となります。これにより胃酸の分泌が乱れ、胃潰瘍などの疾患を招く原因となります。

また空腹はストレスを増大させ、“ドカ食い”や“間食”といった太りやすい生活リズムへと変えてしまうことも問題なのです。

そしてストレスによって食べる物にも変化が現れることも研究によってわかっています。疲れた時は味が濃いもの、甘いものなどを食べたくなるのも自然の摂理。この悪習慣を断ち切る為にも、常に疲れている状態から抜け出す必要があるのです。

 

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Ⅲ.様々なストレス

日常生活において身体がストレスと感じるシチュエーションは多く、人間関係や仕事における精神的な緊張だけではありません。睡眠不足の原因となる電子機器(スマホやゲームなど)の光刺激や音も身体にとって大きなストレスを与えてしまうのです。

このように、ストレスを感じることは身体にとって危機的な状況にあることを表しています。ストレスによって交感神経が優位になることで、アドレナリンと呼ばれるホルモンが分泌され血圧が上がり、血糖値の急激な上昇や心拍数の増加が見られます。

 

このように、交感神経が優位になることで身体は常にフルスロットルの状態を余儀なくされてしまうのです。これでは身体は持つはずありませんね。

人間関係や仕事のプレッシャーから完全に開放されるのは現実的に難しいかもしれませんが、リラックスする時間を作ったり、スマホを操作する時間を減らすことは十分取り組めるはずです。日頃からストレスに晒された身体をいたわるためにも、次に紹介する習慣やエクササイズを取り入れていきましょう。

 

第4章【生活習慣を変えて自律神経を整えよう】

自律神経を整える為には、やはり生活習慣のリズムを整えることが大切です。それでは次に日常生活で取り組むことが出来る自律神経を整える方法をご紹介しましょう。

 

Ⅰ.睡眠時間を確保する

自律神経が乱れる原因に睡眠不足があるように、自律神経を整える為には睡眠はとても大切なポイントです。交感神経の暴走とも言える症状(イライラや倦怠感などの不調)は副交感神経を活性化させることが不可欠です。副交感神経のスイッチを入れる睡眠は、1日中酷使した頭や身体をリフレッシュしてくれるのです。

その為にも、睡眠の前に電子機器を長時間触るのは控えたほうが良いでしょう。前述したように、強い光刺激や情報が加わることで脳が覚醒状態(交感神経優位)となるからです。

布団に入ってからも、ついつい何気なくスマホを触る習慣が付いていませんか?

 

Ⅱ.お風呂に浸かる

忙しい毎日、ついついシャワーだけで済ませていませんか?

実は入浴によって高ぶった交感神経を抑制し、副交感神経を優位にさせて心身共にリラックスさせることが出来るのです。

お湯によって身体が皮膚から温められることによって毛細血管が拡張し、全身の血流量が高まります。このような副交感神経を優位にさせる効果が最も高いのが38~39°と言われています。

 

つまり筋肉の緊張をほぐし、リラックス効果を最大限発揮するためにも、温度設定に注意して入浴する習慣をつけることが大切という訳ですね。

 

Ⅲ.食生活を見直す

やはり健康的な身体を作る為にも、食事は疎かにできない部分です。とりわけ問題となるのが、やはり糖質です。体重や体脂肪増加の原因となる糖質は、過剰に摂取することで脂肪の生成だけではない様々な問題を引き起こしてしまうのです。

糖質を摂取すると血糖値が上昇します。そして自律神経の作用によって膵臓からインスリンと呼ばれるホルモンが分泌され、血糖値を下げる為に働きかけます。正常な摂取量であれば、ホルモンの作用によって穏やかに血糖値は下がっていきます。もちろんこれは正常な反応と言えます。しかし糖質の摂取量が増えすぎると自律神経がその異常を感知し、血糖値を下げるために急いでインスリンを大量に分泌するよう膵臓に指令を送ります。しかし今度は大量のインスリンが効きすぎてしまい、血糖値が一気に下がってしまいます。これにより高血糖から一気に身体にとって危険な低血糖となってしまうのです。そして再び自律神経によって血糖値を向上させるホルモンが分泌されるというサイクルが出来上がってしまいます

 

このように、糖質レベルの高い食品(※高GI値食品)を摂取することによって自律神経に大きな負担をかけることがわかりますね。

 

※GI値とはグリセミック・インデックス(Glycemic Index)の略であり、食品を摂取することで血糖値が上昇する早さを数値化したもの。ブドウ糖を摂取した時の血糖値上昇率を基準の100とし、相対的に表すことができます。つまりGI値が低ければ血糖値の上昇率も低く、インスリンの分泌が穏やかである食品という訳です。

 

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第5章【自律神経を整えるエクササイズ】

自律神経を整えるには、簡単なエクササイズを取り入れるのも効果的です。日常生活のアクセントとして取り組むことで、1日疲労が溜まった身体をリフレッシュしていきましょう。

 

Ⅰ.自律神経を整える“呼吸”

毎日繰り返される呼吸、意識したことはありますか?疲労が溜まれば呼吸は速くなり、何かに集中していると止まってしまう呼吸。これによって肺を覆う胸郭や横隔膜の柔軟性は失われてしまうのです。

 

呼吸は無意識で行うだけでなく、自分の意志によってもリズムを変えることができます。

深い呼吸をすることによって硬くなった胸郭は動き出し、横隔膜は動きを取り戻すことによって動脈が拡張し、血圧を下げ、心身ともにリラックスした状態を作り出します。

テンポだけでなく、呼吸の深さもコントロールすることで自律神経のリズムを整えることが出来るのです。

 

□方法

①仰向けとなり、膝を軽く曲げておきましょう。

 

②お腹に手を置き、胸とお腹を膨らませるようにして鼻から大きく4秒かけて息を吸います。そしてロウソクの火をなびかせるように8秒かけて息を吐いていきます。

これを10繰り返しましょう。

※この時お腹に置いた手が深く沈むように息を吐くことで横隔膜を緩ませ、リラックス効果のある副交感神経を優位にさせることができます。

 

Ⅱ.ストレスから解放!胸椎ストレッチ

背骨の中核を担う胸椎は、浅い呼吸やストレスによって柔軟性を失いやすくなります。そこで胸まわりを大きく開く胸椎ストレッチを行い、凝り固まった身体をリセットして、副交感神経を活性化させていきましょう。

 

□方法

①横向きになり、膝と股関節を90°に曲げて下半身を固定し、両手を伸ばして揃えておきます。

 

②下半身が動かないように注意し、息を吐きながら大きく胸を広げていきましょう。これを左右10回ずつ繰り返していきます。

※この時肩がすくまないよう、大きな弧を描くイメージを持つと胸椎の可動域を広げやすくなります。

 

Ⅲ.胸郭を広げる!広背筋ストレッチ

呼吸によってコントロールできる自律神経にとって、大切なポイントは胸郭です。その胸郭の動きを制限してしまう筋肉は、背中から脇にかけてべったりと付いた広背筋です。猫背のような不良姿勢によって胸郭はつぶれてしまい、広背筋は柔軟性を失います。そこで広背筋のストレッチを習慣的に行い、副交感神経を活性化させるだけでなく、姿勢改善にも取り組んでいきましょう。

 

□方法

①頑丈な柱などを保持し、上半身を固定しておきます。そして柱を保持したまま体重をやや後方へ移すように腰を後ろに引きます。同時に柱を保持した側の足を後方に引いておきましょう。

 

重心を後ろに引いたまま、脇の下をのぞき込むように上半身を捻りましょう。そして最も広背筋のストレッチ感を感じるところで15秒ほどキープしましょう。これを左右3ほど繰り返していきます。

※大きく息を吸うことで胸郭が広がり、広背筋のストレッチをより強く感じることができます。

 

ストレッチの方法にはいくつか種類があり、身体を大きく動かしながら行う動的ストレッチと静かにゆっくりと筋肉を伸ばしていく静的ストレッチがあります。関節の可動域(柔軟性)を高める意味合いは同じでも、副交感神経が優位となるようなリラックス効果を目的とするのであれば、静的ストレッチが最適です。

今回ご紹介したストレッチも、反動を付けずにゆっくりと呼吸をしながら行ってみてくださいね。

 

第6章【まとめ】

何だか調子が悪い、風邪を引いている訳でもないのに体調が優れない、その原因は自律神経の乱れにあるかもしれません。

 

生活する上でやっかいな人間関係は避けては通れないかもしれませんが、ストレスを軽減させる術を持っておくことは大切です。ストレスを和らげ、心身ともに充実した生活を起こる為には自律神経のバランスは不可欠です。今回ご紹介したようなエクササイズやリラックス方法を是非取り組み、毎日の生活を充実させていきましょう!

 

くびれ美人パーソナルトレーナー

山戸