甘く見てはダメ!トレーニング中の熱中症に注意しよう

年々平均気温の上昇が続き、気が付けば35℃以上の猛暑日を経験する回数が非常に増えています。

 

数年前とは打って変わった環境温度は、人々の生活に大きな変化を与えてしまうのです。

 

一昔前は「練習中は水を飲んだらダメだった」「これくらいのトレーニングでへばるなんて気合いが足りない」などのように、根性論なるものが確立されていましたが、そもそもの環境温度に大きな差があることは無視できません。

 

そこで今回は、トレーニング中に起こり得る熱中症の予防や対策について取り上げていきたいと思います。

 

第1章【熱中症とは?】

熱中症という言葉は知っていても、実際にどんな症状が現れたり、どのように対処したら良いか知っていますか?

 

実は毎年約5万人以上の方が熱中症によって搬送されており、それだけ身近に潜む危険の1つなのです。

 

ヒトは体温を常に一定(37℃前後)に保つ恒温動物であり、運動などによる熱産生に伴って体温が上昇すると、皮膚表面からの放熱や発汗によって熱を身体から逃がし、体温を下げようとします。

 

外気温が低い場合、皮膚温度との差が大きいため皮膚からの放熱が主に働き、発汗量は少なくなります。

 

しかし、外気温が高い場合は皮膚温度との差が少ないため放熱効果が低下し、発汗が促されます。

 

これは運動時は特に顕著な反応です。

 

この後の身体に起こる変化は2段階に分かれ、その重症度によって身体に起こる反応が異なります。

 

1.軽症~中等症:1~2度(脱水による熱中症)

本章の冒頭でも記載したように、外気温の変化によって体温調整を担う機能は変化します。

 

∇外気温に伴う体温調整機能の変化

①寒い・・・皮膚からの放熱作用

②熱い・・・発汗による気化熱作用

高温環境下では皮膚の末梢血管が拡張し、循環血流量を増やして皮膚からの放熱だけでなく発汗を促すため、多量の水分が失われてしまいます。

 

この時血管拡張に加え発汗により血管内の水分が減少するため、絶対的に循環血液量が減少します。

 

つまり、水分の補給が追い付かない状態では低血圧症状を呈してしまうのです。

 

∇熱中症の初期症状

①立ち眩み

②疲労感

③失神

④筋肉のケイレン

このような状態は既に熱中症として分類されており、注意が必要です。そして脱水症状が更に進行することで、次に発汗機能自体が停止してしまいます。

 

果たして、発汗による熱の放散が出来なくなると、身体はどれほど危険な状態へと変化してしまうのでしょうか?

 

2.重症:3度体温調節機能の破綻

発汗機能が停止することで、体内の熱の放散経路が失われてしまいます。

 

そして危険な低血圧症状から脱するために自律神経は血圧を上げるよう働きかけ、皮膚末梢の毛細血管は収縮させるため皮膚からの放熱作用も失われてしまうのです。

 

この状態にまで陥ってしまえば、もはや体温を下げる術はありません。

 

異常な高体温により、処置が遅れれば様々な臓器障害が重症化して死に至る可能性があるのです。(この状態を熱射病とも呼ぶ)

 

第2章【熱中症を引き起こす様々な原因】

高温化の環境(35°以上)において、体温の調整は非常に困難を極めます。

 

熱を上手く逃がすことが出来ず、体温を調整する機能が狂ってしまったり、体内の水分量やミネラルのバランスが崩れることで、めまいや頭痛、そして筋肉のケイレンや意識障害などの症状が現れる状態を【熱中症】と言います。

 

熱中症を引き起こす原因は気温の高さのみが原因と思われがちですが、実は様々な原因が考えられます。

 

∇熱中症を引き起こす2つのポイント

①環境因子

②体内因子

それでは次に、環境因子・体内因子のそれぞれについて詳しくみていきましょう。

 

1.環境因子

気温が高いことは熱中症の大きな条件です。これは夏場に多発する熱中症と相関があり、これに加えて日差しの強さは大きなリスクとなります。

そして次に湿度の高さです。ヒトは体温の調整を“汗”による気化熱の放散に頼っていますが、湿度が高くなることで汗の蒸発が抑えられ、それと同時に放熱のタイミングも失ってしまうのです。

 

また屋内では当然空気の流入は抑えられ、室温の上昇や汗による気化熱の発散は妨げられてしまいます。つまり風の弱さも大きく影響してしまうのです。

 

2.体内因子

暑熱環境下による体温の上昇だけではなく、身体自体からの熱の発生にも注意が必要です。

 

例えばいつもより強度の高いトレーニングを実施することにより、同じ環境温度でも体温の上昇具合は異なります。

 

体内でよりたくさんの熱が産生されれば、それだけ多くの熱を放散する必要があるのです。

 

また長期間の外出自粛に伴い日常的な活動量自体が減ってしまえば、身体が暑熱環境の慣れていない可能性がより高くなります。

 

身体が環境に適応するためには慣れが必要であり、急激に生活環境が変わってしまうことも熱中症の大きなリスクとなり得るのです。

 

第3章【熱中症要注意の日は?】

放っておくと死に至る可能性があると言っても、熱中症は初期の段階で処置を行うことで改善されます。

 

つまり、予防(早期発見)対策が大きなポイントとなります。

 

熱中症に気付くためには、環境を把握し、あらかじめ予想しておくべきなのです。

 

∇熱中症が発生しやすい環境

高温多湿の環境下では、熱が逃げづらい状況のため熱中症が発生しやすくなる。また、初夏や雨上がりなど、急激に気温が上がりやすい状況にも注意が必要となる。そして暑い屋外だけでなく、バドミントンや剣道などの屋内競技場でも同様に注意すべきである。

第4章【こんな症状は熱中症かも?】

熱中症が起こる現場はスポーツの場面だけではありません。

 

以外にも川や海など、水際での熱中症も多く報告されているため簡単に熱中症の有無を判断できるようにしておくことも大切です。

 

1.めまいや顔・身体のほてり

脱水を伴う低血圧症状により、めまいや立ち眩みが起きやすくなります。また、放熱機能が正しく働いていないため、顔や身体全体が熱っぽくほてるなどの症状が見られます。

 

2.筋肉のケイレン・筋肉痛

多量の発汗により電解質異常(塩分の消失)が起こることで、筋肉の収縮・弛緩を上手く行うことが出来なくなります。これを熱ケイレンと呼び、熱中症の初期症状として確認されます。

3.異常な汗

普段と異なるような汗のかき方には注意が必要です。

 

一向に引かない汗は勿論のこと、急に汗をかかなくなった場合には熱射病の可能性があるため、直ちに処置が必要な場合があります。

 

4.身体のだるさや吐き気・頭痛

電解質異常に伴い、全身の脱力感だけでなく内臓への悪影響が懸念されます。

 

嘔吐や吐き気に伴い、更なる水分の消失には注意が必要です

 

また毛細血管の過剰な収縮により引き起こされる頭痛の特徴として、脈拍に合わせるようなガンガンとした頭痛がみられることがあります。

 

5.高い体温

体温は熱中症の重症度判断に重要なポイントとなります。

40℃以上なら重症

37~40℃なら中等症

体温計が無い場合は皮膚に触れたり、皮膚の色味(赤く乾いている)も判断基準として用いることが出来ます。

 

6.呼びかけの返事がおかしい、歩行困難

声をかけても反応が薄かったり、おかしな返答がある場合は重症度が高いため、直ちに処置が必要となります。

 

また身体全体が引き付けを起こすなど、歩行が困難となる場合も同様です。

 

第5章【正しい熱中症対策を知ろう】

熱中症は正しい対応をすることで、重症化を防ぐことが出来ます。

 

厳しい暑さが続く夏場は勿論のこと、残暑の影響がある秋口にかけて注意が必要となりますので、自分だけでなく家族や友人を守るためにも対処法を心得ておきましょう。

 

1.軽症の場合

熱中症が疑われる場合、まずは涼しい所への移動を最優先します。

 

この時できればエアコンの効いた室内が理想ですが、難しい場合は風通しの良い木陰でもOKです。

 

 

嘔吐による吐しゃ物は呼吸困難を引き起こし、二次的な被害が及ぶ可能性があるため十分に注意し、冷たいスポーツドリンク(OS-1など)で水分補給を促します。

 

そして血圧を一定に保つために着衣を緩め、足を高くした状態で循環血流量を改善させていきましょう。

 

この時、大血管(頸動脈・腋窩動脈・鼡径動脈)へ氷嚢を当てることで血液温度を下げることができ、素早く体温を下げることが出来ます。

 

 

∇軽度熱中症への対策

①涼しい所へ移動させる

②水分(電解質)を補給させる

③着衣を緩め、足を高く上げる

④首・わきの下・太ももの付け根に氷嚢を当てる

⑤ケイレンやめまい、頭痛が継続する場合は医療機関を受診する

少しでも身体に不安が残る場合は、迷わず医療機関を受診するように心がけておきましょう。

 

2.中等症・重症の場合

中等症・重症の場合は、軽症時の対応を継続しながら救急車を手配する必要があります。

 

つまり救急車が到着するまでの間、出来るだけ熱中症症状の悪化を防ぐことが最優先されるのです。

 

∇中等症・重症熱中症への対策

①救急車を呼ぶ

②涼しい所へ移動させる、着衣を緩めて足を高く上げる

③可能であれば水分(電解質)を補給させる

④首・わきの下・太ももの付け根に氷嚢を当てる

第6章【熱中症を予防するには?】

熱中症になりやすい身体となりにくい身体、具体的に何が違うのでしょうか?

 

勿論トレーニングや暑熱環境での行動における意識の違いはありますが、やはり重要となるのは身体がその環境に適応できているかどうかと言えます。

 

暑い時期になる前からトレーニングを含め、環境に慣れる時間を設けることで、発汗量を増加させて体温が急激に上昇しにくい身体づくりをすることが出来るのです。

 

∇トレーニングと暑熱順化(参照記事:スポーツ救急医学 ベースボールマガジン社)

※一週間程度に暑熱環境化におけるトレーニングを行うことで、発汗量に明らかな変化が生まれ、体温(この場合深部体温:直腸温)の上昇が防がれていることがわかる。

 

またここまで何度かご説明したように、熱中症になりやすい状況として高温(30℃以上)であることは当然のこと、気温が高くなくても湿度が高かったり無風や日差しが強い室内では特に注意が必要ですので、運動・活動の中止や量を減らし、こまめに休息を取ることが重要となります。

 

また、水分の摂取を欠かすことはできません。

 

∇水分補給の有無による体温上昇の違い(参照記事:スポーツ救急医学 ベースボールマガジン社)

※同程度の運動を行う際の水分補給の有無による体温上昇の変化を表している。水分補給があるだけでも体温の上昇を抑えることが出来るため、摂取すべき水分の内容についても把握しておくべきである。

 

0.2%程度の塩分を含み、10℃前後に冷やしてある水分が最も吸収率が高く効率的です。

 

ダイエットや減量に関しては、スポーツドリンクでは多量の糖質が含まれているため、少し薄めておいたり、塩タブレットなどによる摂取を心がけておきましょう。

 

水分摂取のタイミングは運動開始前の30分前~運動終了後に掛けて500mlを複数回に分けて摂取します。

 

喉が渇いていなくても、夏場では特に水分は失われており脱水は確実に進みますので、喉が渇いた感覚が無くても積極的に水分を補給することが大切です。

 

第7章【まとめ】

いかがでしたか?

 

暑くなるこれからの季節、せっかくダイエットや健康の為に運動を始めようと思っても、体調を崩してしまえば元も子もありません。

 

特に温暖化だけでなく、日頃の運動不足などによる暑さの影響は計り知れないものがあります。

 

そしてもしあなたがひとたび熱中症を引き起こしてしまい、運動に抵抗感が出たり嫌いになってしまえば、身体への損失はきっと大きくなってしまうことでしょう。

 

最後に熱中症の予防・対策についてまとめておきます。

 

∇あなたが知っておくべき熱中症対策

①外気温や湿度、風に注意を払う

②こまめな水分補給をする

③少しでもおかしいと思ったら活動を中止し、休息を取る

重症化する主なパターンは、自分の感覚に頼ってしまうことです。

 

『自分はまだ大丈夫』

『まわりの人は出来ているから』

 

周囲の雰囲気に飲まれ、適切な休息・水分補給ができていないのではありませんか?

 

熱中症は誰しもが起こる可能性があります。

決してあなただけの問題ではありませんので、楽しいトレーニングライフを満喫するためにも、そしてあなた自身を守るだけでなく家族や仲間を守るためにも是非正しい熱中症の知識を付けてくださいね!

 

広島のパーソナルトレーニングジムくびれ美人

山戸 勝道

 

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